ライトノベル レビュー

検索結果

ライトノベル レビューでタグ「獅子は働かず 聖女は赤く」が付けられているもの

ファンタジーですが、主人公はニートです。
でも、それだけじゃ終わらない物語が始まる!!
禍竜戦争と呼ばれる大乱に見舞われたガルダ正統帝国。
戦が終わり、国が平和を取り戻しつつあるそんな頃、
聖職者見習いのアンナは、毎日自分を見つめる青年の姿に気づいた。
その青年・ユリウスが何か悩みを抱いているのだと勝手に思い込んだアンナは、持ち前の行動力で、彼の自宅を強襲する。
妹のような少女・サロメを働かせ、自分は働きもしないユリウスに怒るアンナは、彼を更正させることを誓うのだった。
しかしそんな彼らに、運命と過去が戦いを引き連れて迫る!
竜と鋼と魔女のファンタジー、時々コメディ。
物語がついに始まる!!

 部屋の真ん中にある囲炉裏で、一人の少女が鍋をかき混ぜていた。アンナよりも年下で、十代の前半、少なくとも半ばを過ぎてはいないように見える。
 夕飯のものか、鍋から漂ってくる香ばしく、刺激的な匂いに、アンナの腹が鳴る。
「あの子……。妹さんでしょうか?」
 黒い衣服に身を包んだ青年とは違い、その少女は真っ白だった。
 後ろで編んだ長い髪は色が抜け落ちてしまったように白い。その髪は細く、窓から入るわずかな陽光に透けて輝く。その光はどこか儚いものをアンナに感じさせた。
 肌を出さない青年とは違い、身軽な印象の衣服もまた白い。
 そこから伸びる四肢はあまりにも細く、触れれば壊れてしまいそうだと、アンナは思う。
 服の下に覗く肌は血の気が薄く、穢れない新雪のようだった。
 その横顔はあどけなく、あまりにも可愛らしい。
 頬にかすかに落ちた朱の色と、宝石のように鮮やかな緑色の瞳だけが、白い少女にわずかな色彩を与えている。
「しかしな、ユリウス。おぬし、ちょっとは手伝ってやろうとか、帰ったら夕飯の支度を済ませておいたりとか、そういう心遣いはないのか?」
 鍋を混ぜ、味見などしながら、白い少女は青年に声をかける。
 アンナはあの青年の名がユリウスだということを今知った。